帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛
帯状疱疹とは
帯状疱疹とは、文字通り帯状の湿疹で、子供のころに感染した水ぼうそうのウイルスが、神経節にひそかに住み着いたまま残っていて、体の抵抗力が低下した時に再び活性化することで発症します。
帯状疱疹の特徴は、痛みを伴う赤い斑点や水疱(水ぶくれ)などの発疹が、脇(あばら骨)や顔、足など神経の分布に沿って帯状にできる病気です。
体の抵抗力の低下は、過労やストレス、加齢などによって引き起こされます。このため、仕事などが忙しい年末や、連休などで遊び疲れた後に発症する人が多くなります。また、寒さが厳しくなる真冬から冷えによる体へのストレスも抵抗力の低下を引き起こし、ピークになる春先には、気候の変化とともに帯状疱疹を発症する人が増加する時期となります。
年齢による発症頻度は、20代と50代に多くみられます。20代に多くみられる原因は、子供のころにかかった水疱瘡やワクチンの接種による免疫の効果が弱まってくる時期に当たり、同時に日常のストレス、過労が重なるためと考えられます。
また、妊娠中に水疱瘡(水ぼうそう)にかかるとお腹の赤ちゃんに影響があるとされています。周産期水痘や先天性水痘症候群という名前が知られています。
帯状疱疹が原因となる病気
近年、子供から大人まで増加しているアトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下し、帯状疱疹にかかりやすくなり、症状も重くなる傾向にあります。また、糖尿病や白血病、ステロイドの使用や手術後、入院中、退院後、抗癌剤、放射線治療、人工透析、妊娠中や、出産後に免疫力が低下して帯状疱疹を発症しやすく、以下のような併発しやすい病気にも注意が必要です。
以上の症状でステロイドを使用できない妊婦、授乳中のお母さん、抗がん剤等で治療中の方には特に鍼灸治療が有効です。
帯状疱疹後神経痛
帯状疱疹後神経痛とは、帯状疱疹の水疱などが消え、帯状疱疹が治癒した後も続く痛みのことです。
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹を発症した時には正常であった神経線維が、ウイルスによって傷つけられてしまうからです。
また、神経が傷ついた結果、神経の過剰な興奮や自発痛、痛みを抑制する経路の障害などが起こり、これが原因となって、痛覚過敏やアロディニアと呼ばれている、通常では痛みとして認識しない程度の接触や軽微な圧迫、寒冷などの非侵害性刺激が、痛みとして認識されてしまう感覚異常が起こるとされています。
帯状疱疹の合併症としては、神経痛が最も多く、帯状疱疹にかかった人の5%~20%に合併するとされています。
帯状疱疹後神経痛は、1,2か月で症状が落ち着く人が多い傾向にありますが、3分の1の人は3か月以上痛みに悩まされ、5分の1の人は1年以上続くという統計が出ています。3か月以上続く人は、発症の当初から痛みが強いことが知られています。また、3年以上痛みに悩まされて来院される患者さんもいます。
鍼灸治療
鍼灸院の場合、新患さんとして帯状疱疹の治療で来院される患者さんは少なく、多くの方は、帯状疱疹後の神経痛を訴えて来院されます。リリカのような強い薬を長期間服用していても痛みで眠れず、来院される方ばかりです。
水疱と痛みがあらわれる帯状疱疹の初期症状での鍼灸治療は、どちらかというと以前に別の病気で当院に来院経験がある患者さんや、現在進行系で来院されている患者さんのご家族の相談、もしくは、一度帯状疱疹の治療経験がある患者さんです。
鍼灸治療は帯状疱疹によって傷害されている神経の支配領域に対して直接痛みを緩和させてくれる効果があります。
また、お灸の熱刺激は、ヒートショックプロテインを体内で生産し、体の機能を活性化させてくれる作用もあります。
ヒートショックプロテインとは、傷んだ細胞を修復する働きを持つタンパク質のことで、白血球の増加、NK細胞の増強、抗炎症作用など免疫細胞の働きを強化してくれます。